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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1854号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

各被告人辯護人下田金助上告趣意について。

原判決はその判示において、被告人石原嘉造は、大正一四年九月一一日以降昭和一一年三月九日迄の間前後六回に亘り夫々東京區裁判所において、賭博罪に因り罰金刑に處せられた外、昭和一一年三月九日同區裁判所において常習賭博罪に因り、懲役二月に處せられ、被告人佐藤誠一は、昭和五年六月六日、同九年五月一一日の二回に亘り夫々大垣區裁判所において賭博罪に因り罰金刑に處せられ、その外昭和一九年八月一四日同區裁判所において常習賭博罪に因り懲役四月(但し昭和二〇年勅令第五八〇號減刑令により懲役三月に變更)五年間執行猶豫の言渡を受け、被告人河口泉は、昭和一九年八月二〇日同區裁判所において常習賭博罪に因り懲役四月(但し前同懲役三月に變更)五年間執行猶豫の言渡を受けた者であるところ、孰れも判示賭博を常習として爲した旨判示し、證據説明において、常習の點を除くその餘の事実は、被告人三名の判示同趣旨の供述、石原、佐藤に對する各身許調書並びに河口に對する前科回答書中同人等が判示のように處刑された旨の記載押収している現金四六一〇圓花札四八枚毛布一枚の存在その他を綜合して認め常習の點は、被告人等が夫々右認定のように賭博罪又は常習賭博罪に因り處刑された事実に加え更に本件犯行を敢行した事蹟に徴してこれを認定する旨説明したものである。すなわち原判決は、被告人各自の常習を各自の判示前科の外押収金額、用具の存すること、賭博の相手方が夫々賭博又は常習賭博罪にて處刑された者である點等を綜合してこれを認めた趣旨であること明らかである。そしてかゝる點を綜合すればその常習の事実を肯認するに足り、その間經驗則に反する違法は認められない。從って、原判決がその認定事実に對し常習賭博の法條を適用したのは正當であって、原判決には所論の違法はない。論旨は、その理由がない。

よって舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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